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精神疾患を併せもつ高齢者への対応

精神疾患を併せもつ高齢者への対応

新型コロナ感染の広がりのなか、万全の感染対策を行い、今月もなるコミ聴講とZoom研修でのハイブリッド研修で無事に終えることができました。今月のテーマは「精神疾患を併せもつ高齢者への対応~精神訪問看護からの事例を通して~」。講師は、(訪問看護ステーション明王時の看護師さん) 管理者 嶋本 亜紀先生よりご講義いただきました。
参加者数は、Zoom参加者:27名(最大)・なるコミ聴講:13名:合計40名
ご参加された皆さま、お疲れ様でございました。

 今回、精神保健福祉の歴史から始まり、精神通院の自立支援医療、また、疾患別の事例を交えて、症状や対応方法について話されました。
まず、歴史として、明治33年に私宅監置(座敷牢)が法律で認められ、大正8年に私宅監禁から精神病院へシフトされ始め、昭和25年にようやく私宅監置が廃止となったとのことでした。しかし、東京オリンピック開催年の昭和39年に、精神疾患患者によるライシャワー(アメリカ大使館)氏傷害事件が起こったことをきっかけに、精神病院の開設ラッシュ での入院増加、また昭和59年の宇都宮事件(栃木県)の職員による暴力で、200人以上の患者の不審死が発覚し、人権が全く守られていなかったとのことには驚きました。2012年の障害者総合支援法などの法律の改正により、病院や施設から地域へと大きく舵を切り始めたとのことでした。現在の厚生労働省が指定する5大疾患にも挙げられ、また患者数も最多であり、年間に自殺者数(25,000人)の増加とも結びついているのではとのことでした。和歌山県も数年前に自殺率ワースト1になったことがあるとのことで、真剣に取り組む必要があることを学びました。入院の患者数は、約30万人でなんと世界で一番多いことには驚きました。入院期間も1年以上が20万人、この内、約7割が社会的入院であるとのことでした。背景としては、帰る家がない・サポートする人がいない・地域や家族の反対が強く地域に戻れないとのことで、他の病院や高齢者・障害者の施設への入所となるケースが多いとのことでした。ただ、地域で支えがあれば退院できるケースも多く、主治医からも退院条件として、適切なサポートの導入と服薬継続は必須とのことで訪問看護の利用に繋がっているのではないかとのことのことでした。精神系の訪問看護師は、目に見えての処置をすることがないので、周囲からは役割が見えにくいと言われることもあるそうです。現実として、退院直後の病状の不安定時や家族や身近な人のサポート力が弱い時・生活状況がわからない(診察では見せない表情や状況)・病識が乏しく、治療中断を繰り返す(特に統合失調の方は1年で7割再発)時など必要であり、期待されていることが理解できました。
障害者総合支援法において、自立支援医療の中の精神通院が精神科訪問看護の位置づけになっていることを知りました。費用の面でも、自立支援医療を利用することで、若い方で医療費負担が3割の方でも1割負担になり、また所得に応じて負担額の上限設定がされているため、自立支援医療対象の方は利用して欲しいとのことでした。
 最後に、関わった疾患別の事例紹介と疾患別の接し方ついて説明して頂きました。
①うつ病の方への接し方としては、身体疾患と同様にいたわる、責めない(病気であって本人の責任ではない)、ゆっくり休めるよう配慮する。(良くなった、治ったという声かけはプレッシャーとなる)などが挙げられました。
②パーソナリティー障害の方と向き合うときには、見捨てられ不安、相手を試す、他人を操作するということがあるので援助者は留意して欲しいとのことでした。
③依存症の方への接し方について、援助者は相手の外傷性の体験に曝された直接の結果として苦痛を経験する、いわゆる、共感疲労・共感ストレス・二次的外傷性ストレスがおこり、バーンアウトにより職を辞めてしまうこともあるので症状を理解して支援にあたって欲しいとのことでした。
④認知症の方への接し方について、認知症になってもプライドはしっかり残るため、叱る、否定する、拒否するといったネガティブな言動はトラブルを招きやすい。相手に話を合わせる私たちの精神的余裕が大切とのことでした。最近の精神科病院が目指す認知症の治療として、カンフォータブルケアの紹介がありました。カンフォータブルケアとは認知症高齢者に快刺激を中心に与えることで周辺症状の緩和が期待でき、セルフケアは出来るだけ維持し生活の質の向上を図ることができるため援助者のモチベーション維持が期待できる方法とのことです。具体的な快の刺激とは、いつも笑顔・いつも丁寧語・目線を合わせる・優しくふれる・ほめる・謝る態度を見せる等とのことでした。認知症でなくても、普段の人と人とのコミュニケーションにとっても大事なことであると感じました。
講義後、なるコミ聴講者から「精神訪問看護ステーションとして初回に関わる際にどういったところに注意していますか?」との質問があり、嶋本氏いわく「疾患で人を見ないようにしています。背景や生活歴なども含めて接するようにしています」とのことでした。事例や疾患の接し方にもあったように、疾患に対して偏見をもつのではなく、疾患を正しく理解することが大切である、また、疾患や服薬のサポートも重要であるが、その方の生い立ち・生活歴・周囲のサポート力や関係性・現在の生活なども含めて、1人の人としてかかわることがお互いのより良い支援関係にもつながってくると学ばせていただきました。
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