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お知らせ

高齢期の不眠のケア

 11月もなるコミでは、未来塾開催において、万全の感染対策を行いながら、なるコミ聴講(限定20名)とZoom研修でのハイブリッド研修を行いました。今月のテーマは、ケアマネジャー必見シリーズ第5弾「高齢期の不眠のケア」でした。講師は、松本 幸男先生(松本メンタルクリニック 院長 )にご講義いただきました。
参加者数は、精神科医からの勉強会という関心の高さからか、Zoom参加者:17名(最大)・なるコミ聴講:18名:合計35名と参加人数が多かったです。
ご参加された皆さま、お疲れ様でございました。

 今月は、睡眠、不眠・不眠のタイプ・不眠治療、薬物療法という項目でユーモアを交えながら、分かりやすく丁寧にご講義をして頂きました。
睡眠とは、脳の活動により脳、脊髄液に睡眠誘発物質(以下、メラトニン)が溜まり、睡眠中枢に働き眠気を引き起こすことである。また、逆に、睡眠中に溜まるホルモン物質として、覚醒維持物質(以下、オレキシン)があり、概日リズム(サーカディアンリズム)によって睡眠や覚醒を繰り返していると話されました。
不眠とは、不眠の訴えがあり、翌朝の覚醒時に睡眠に対する不足感が強く、そのために日中の身体的・精神的・社会生活上の障害がある状態のことであり、高齢者施設の入居者様は、「よく眠れますか?」の問いに「はい、よく眠れます」と不眠の訴えがない、また眠れないことで社会生活上に支障がない等の理由から、不眠に当たらない人が多いのではと感じていますとのことでした。不眠のタイプとして、寝つきが悪い「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚め、眠った気がしない「中途覚醒」、眠ったが早朝に目が覚め、しんどさが残る「早朝覚醒」があると説明していただきました。。
 不眠の治療方法として、睡眠を妨害する生活習慣や心配事に焦点を当てて、適切な睡眠習慣を取り戻す方法の「行動療法」と医師の指示で処方される薬で睡眠を改善する「薬物療法」の2つがあると紹介がありました。行動療法として、①メラトニンを溜めるための日中活動をしっかり行うこと、②睡眠時間を6~7時間でメラトニンがなくなってしまうためそれ以上は眠らないこと、③溜まりかけたメラトニンをなくさないために昼寝をしないこと、④眠ることにこだわらないことであると話されました。眠ることへのこだわりから、眠らないといけないとの焦りから興奮が生じ、メラトニンが溜まっていても眠れなくなるという心理的な悪循環に陥ってしまうことがあるそうです。今までの松本院長の経験上、夕食の時間や就寝時間が早く、睡眠時間が長い高齢者にとっては、メラトニンが溜まりにくい生活の為、上記4つの健康的にもよい行動療法は難しいと感じているとのことでした。次に薬物療法についての説明がありました。薬物療法の主流薬剤には3種類あり、昔から睡眠薬として処方されているベンゾジアゼピン系薬剤、睡眠誘発物質のメラトニンを早く感じさせることができるメラトニン受容体作用薬、覚醒維持物質のオレキシンを感じにくくさせるオレキシン受容体拮抗薬があり、ベンゾジアゼピン系薬剤には、筋弛緩作用があるため、高齢者の方に使用した際は、転倒の危険性等に注意が必要である。また、薬剤の使用により、「認知症状」の発症・進行はなく、一時的な「認知機能」の低下であり、元に戻ることを知って欲しいと話されました。
 最後に、参加者から、①プラセボ効果でも、筋弛緩作用が起こるのか、②経皮吸収型製剤(以下、テープ剤)での睡眠作用薬は存在するのか、また発売する動きがあるのかの2つの質問がありました。回答として、①プラセボ効果とは、本人が睡眠薬を服用していると理解してなければ起こらない効果で、認知症状のご高齢者の方には、プラセボ効果は起こらないと考えられる。②現在のところ、テープ剤は存在しないし、今後も出ないのではと考えられます。理由として、テープ剤は、誰かが剥がすまで効果があり、また皮膚吸収するため、剥がした後でも効き目残り持続性は長いことから、高齢者には危険であると考えられるためとのことでした。
 高齢者に限らず、睡眠の質は、私たち現役世代にとっても深い問題であり、また、参加者の質問からも分かるように、利用者様や入居者様への対応に直面している課題であることが理解できました。
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