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お知らせ

高齢者に多い低栄養

 全国的に新型コロナウイルスの第7波が蔓延し、和歌山県も連日、感染者数過去最多を記録しています。8月の未来塾は、なるコミにおいて万全な感染対策を行いながら、ハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「高齢者に多い低栄養について」でした。講師は、伊藤 智子先生(わかやま栄養ケア・ステーション すみれ 管理栄養士)(以下、先生)からご講義いただきました。今月の参加者は、Zoom参加者:15名(最大)・なるコミ聴講:9名:合計24名でした。
ご参加された皆さま、有難うございました。
 
 高齢者に多い低栄養を、①在宅療養者(高齢者)の現状、②低栄養とは、③栄養の役割、④管理栄養士の訪問サービス、⑤症例紹介についてカテゴリー別にご講義していただきました。
 ①の在宅療養者(高齢者)の現状として、高齢者の栄養障害には、老化に伴う栄養問題、疾病・要介護状態・疼痛、不健康な行動、経済及び社会問題等、様々なリスクがあると話されました。また、虚弱サイクルのフローチャートを示され、食事低下などの些細なきっかけが、低栄養やサルコペニアを引き起こし、ADL低下・要介護や転倒等の悪循環になりやすく、現在は、身体問題だけでなく、社会的問題や精神心理的問題も視野に入れ、考えていかなければならないと、分かりやすく説明してくれました。食事の現状としては、食事作りの能力欠如や食事の偏り、食欲不振等があり、理由して、独居や認知症の進行が大きく関係しているとの話しでした。顕著なデーターとして、在宅療養者(約1000人)の栄養状態を、MNA-SF(簡易栄養状態評価表)でスクリーニングした結果を示され、約70%の方が低栄養と低栄養のおそれであるというに驚きました。
 ②の低栄養の中で、低栄養の原因として、不十分な食事摂取(エネルギー、たんぱく質の不足)、不良な食事内容(エネルギー、たんぱく質の質)、疾患による必要量の増加、栄養分の喪失増加などであるとの説明がありました。また低栄養が起こると、体に貯蔵されている糖、脂肪、たんぱく質が順に分解されていき、実際、外からでも分かりやすい症状としては、体重減少、筋肉量の低下、感染症や傷等の治癒の遅延、脱水症状等、が現れてくるとの話がありました。
 ③の栄養の役割の説明の中で、BMIと体重減少率で評価した低栄養のリスク表を示され、BMI 18.5未満や体重減少率が3%以上(1か月)になってくると、中や高程度にリスク危険度が上がってくるとのことでした。また、上記のMNA-SF評価での低栄養と低栄養のおそれの方の、60%が嚥下障害を持たれているとのデーターも示されました。噛みにくい・飲み込みにくい方の料理のコツとして、野菜の繊維を断ち切る、長芋とろろ、温泉卵、マヨネーズ等のつなぎの使用、粥ミキサーをとろみに使う等が挙げられました。認知症や虚弱予防の観点から、副食の食品摂取多様性スコア(10食品のリスト)として、食材の頭文字を取った(例:魚=さ、海藻類=か)「さあにぎやか(に)いただく」をご紹介して頂きました。対象者に、食事摂取について聞き取りをするときにでも、知っておいて欲しいとのことでした。
 ④の管理栄養士の訪問サービスとして、介護保険・医療保険の制度利用においての説明がありました。介護認定を行っている方は、介護保険制度が優先利用になるそうです。また、居宅療養管理指導費ⅠとⅡの違いについての説明もありました。病院又は診療所等の機関からの在宅への訪問は、居宅療養管理指導費Ⅰで、それ以外は居宅療養管理指導費Ⅱとのことでした。居宅療養管理指導費Ⅱで訪問する際は、病院又は診療所等と契約と指示が必要であるそうです。先生より、最近の動向として、令和3年の介護保険制度改正では、施設系や在宅系でも栄養面に重視し、更なる充実した加算点数が望めるようになってきているとイラストを紹介してくれました。実際の訪問先では、身体的状態・心理的状態・社会的状況や価値観・人生観までを考慮し、目標を定めていくとのことでした。具体的には、食事摂取量と栄養状態のチェック、調理指導をはじめ、なんと買い物指導まで、一緒についていって行うことには驚きました。
 ⑤症例紹介として3事例紹介され、1事例目は69歳の前頭側頭型認知症のBMI12.6の女性で、必要最低限の食事や水分の経口摂取が目標の方で、身長156㎝、体重30.6㎏、BMI12.6であったが、食形態の調整や栄養補助食品(メイバランス・エンシュアリキッド)で補うことで、1年間で約40㎏まで回復し、最近は、笑顔も多く順調に生活されているとのことでした。2事例目は、85歳の糖尿病の男性で、血糖コントロールが目標の方で退院後の暴飲暴食が原因で血糖値が300以上になったことを受け、訪問に至ったケースの紹介でした。妻と2人暮らしであり、食事の量や質の変化、また、主治医との連携でインスリン調整を行ってもらうことで平均血糖値が170前後まで徐々に下がってき、家族共々喜ばれたとのことでした。3事例目も、血糖コントロールと同様ではあるが、食事を楽しみたいとの思いで支援に入ったとのケース紹介でした。夫婦2人暮らしで、妻が約20年間、食事療法をしてきたため、訪問栄養指導には不本意であったそうですが、一緒に買い物や料理を行っていくことで血糖値も徐々に落ち着き、妻もご納得され、楽しんで生活されたケースであったとのことでした。
 最後に、先生より、「食べること」は、栄養補給と同時に、その方の尊厳・生活の楽しみ・生き甲斐等、あらゆる要素を含んでおり、まさに基本的な生活機能であると話されました。また、在宅療養の生命線であり、最期の時まで「食べること」「生き続けること」を支援していきたいとの話がありました。伊藤先生、遅くまでありがとうございました。
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