
「中出し」とは医学的には膣内射精のことを意味し、勃起した陰茎を膣内に挿入した状態で射精する行為です。
膣内に射精された精子は最短30 分ほどで子宮に到達し、排卵期に当たれば30〜50 %前後の確率で妊娠する可能性があります。
安全日・生理中であっても妊娠の可能性はゼロにはなりません。1 年避妊せずに性行為を続けた場合、約85 %のカップルが妊娠に至ると報告されています(WHO 統計)。
経口避妊薬(ピル)は排卵抑制による避妊効果のみを目的とした薬で、クラミジア・淋菌・HIV などSTI を防ぐ効果はありません。
コンドームを併用せず性行為し、膣内射精すると性病の感染リスクが大幅に高まります。(参考:厚生労働省日本臨床腫瘍学会)
この記事では中出しすることのリスクとピルを用いた正しい避妊方法について解説します。
ピル服用中に中出ししても良いと言われる理由と誤解について
服用状況 | 失敗率(年間妊娠率) |
---|---|
正しく毎日同時刻に服用した場合(パーフェクトユース) | 0.3 %(1000人中3人) |
日常的に飲み忘れなどがある場合(ティピカルユース) | 約7〜9 % |
低用量ピルは排卵を抑え、子宮頸管粘液を粘り気がある状態にすることで精子の子宮内侵入を防ぎ、子宮内膜に着床しにくくする「三重のバリア」で避妊効果を発揮します。
そのため正確に服用できていればコンドーム並み、あるいはそれ以上の高い避妊率を得ることができ、中出しをしても妊娠のリスクは低いと考えられています。
誤解 | 実際のリスク・対処 |
---|---|
「ピルを飲んでいるから 100 % 妊娠しない」 | 飲み忘れ・服用時間のズレ・下痢や嘔吐・一部薬剤との併用で失敗率は急上昇します。 少なくとも服用開始後 7 日間と、2 錠以上連続で飲み忘れた後 7 日間はコンドームを併用してください。 |
「ピルを飲んでいれば STI も防げる」 | ピルはホルモン剤であり、感染症予防機能はありません。カップルのどちらかに STI リスクがある、または検査歴がない場合は必ずコンドーム併用が推奨されます。 |
「休薬期間(偽薬期間)なら避妊効果が切れる」 | 休薬 7 日以内であればホルモン濃度は避妊域に保たれるため、正しく続けていれば休薬中でも避妊効果は維持されます。ただし、休薬期間の始めや明けに飲み忘れると、避妊の効果が下がる可能性があるため注意が必要です。 |
ピルを適切に服用できていれば、中出しによる妊娠確率は 0.3 %程度まで低下します。
ただし、飲み忘れがあると失敗率は一気に 7〜9 %へ上昇し、STI も防げないため、実際の性行為ではコンドームも装着して二重で避妊するのが安全です。
ピル服用中は「中出し OK」と安易に考えず、決められた方法で正しく服用し、定期的に医師の診察を受けるようにしましょう。
ピルの副作用には注意
ピルには 低用量ピル・超低用量ピル・ミニピルなど複数の種類があります。
いずれも服用開始後しばらくはホルモン量の急な変化に身体が慣れようとするため、軽い吐き気や胸の張り、むくみといったマイナートラブルが起こりやすいのが特徴です。
多くの場合 1〜3 か月で自然に落ち着きますが、日常生活に支障を感じるほど症状が強い場合は、薬の種類や用量を見直すことで改善されるケースも少なくありません。(参考:東京血管外科クリニック)
一方で、ごく稀ですが深部静脈血栓症や肺塞栓症、脳卒中など命に関わる重篤な副作用が生じることも。
厚生労働省の安全性情報によると、35歳以上で1日に15本以上たばこを吸う人や、高血圧、著しい肥満、過去に血栓症を患ったことのある人は、脳卒中のリスクが高まるとされています。
そのため、上記に該当する人がピルを服用する場合は、禁煙することが強く推奨されています。(参考:厚生労働省)
こうした重大なリスクを回避するには、早期の対応が重要です。
足の強い腫れや片側だけのむくみ、突然の息切れ・胸痛、視界の欠けや激しい頭痛といった症状が現れた場合は注意が必要です。
軽い副作用でも長引いたり悪化したりする場合は、自己判断せず、早めに産婦人科を受診して医師の診察を受けることをおすすめします。
低用量ピルで避妊する場合の注意点
低用量ピル(OC)は 毎日同じ時刻 に1錠ずつ飲み続けることで排卵を抑える薬です。飲み忘れや服用時間の大きなずれ(12 時間超)があると血中ホルモン濃度が下がり、一気に避妊の失敗率が高まります。
服用開始7日間と2錠以上連続で飲み忘れた後の7日間は、念のためコンドームを併用してください。
日本産科婦人科学会のガイドラインでも、リファンピシン系抗生物質やてんかん治療薬といった酵素誘導薬を併用すると薬の効果が低下する可能性があることが明記されています。(参考:日本生理学会)
もう一つ見逃せないのが血栓症のリスクです。
厚生労働省は、35歳以上で1日に15本以上喫煙している方や、高血圧、肥満、さらに片頭痛(前兆あり)といった複数の要因が重なる場合、血栓症が命に関わる重篤な状態になる可能性が高いとして、特に注意を呼びかけています。
脚の強い腫れや息切れ、激しい頭痛など、気になる症状があれば、自己判断で様子見するのではなく、すぐに救急受診することが大切です。
ポイント
- 服用開始7日間と飲み忘れ後7日間は必ずバックアップ避妊を。
- 吐き気/下痢で2時間以内に薬を排出したら同じ錠剤をもう1錠。
- 定期健診(血圧・血液凝固系)は年1回を目安に。
アフターピルで避妊する場合の注意点
アフターピル(緊急避妊薬)は「とにかく早く飲む」が最大のポイントです。
レボノルゲストレル(LNG)錠は性交後 72 時間以内、ウリプリスタル酢酸エステル(UPA)錠は 120 時間以内に服用すると妊娠阻止率97〜98 %が報告されていますが、時間経過とともに避妊できる確率は低下します(参考:日本生理学会)
服用後2時間以内に嘔吐した場合はもう一錠を再服用してください。主な副作用は吐き気・頭痛・倦怠感・消退出血で、ほとんどが1〜2日で軽快しますが、3週間経っても生理(または消退出血)が来ないときは妊娠検査薬で確認しましょう。
陽性または不安な症状が続く場合は、産婦人科を受診して相談してください。
近年はネット通販や amazon、並行輸入品も見かけますが、有効期限や保存状態が不明・偽造薬混入のリスクが否定できません。
厚労省・日本産婦人科医会は医療機関、またはクリニックのオンライン診療による処方が推奨されています。
ポイント
- 緊急避妊は一回飲むだけですが常用はできません。次周期から低用量ピルやIUDなど計画的な方法に切り替えてください。
- 併用禁忌(セイヨウオトギリソウなど)やBMI 30 以上では効果減弱が指摘されています。医師に必ず申告しましょう。
- アフターピルも性感染症は防げません。次の性行為ではコンドームを使用してください。
そのほかの避妊のためにできること
低用量ピルやアフターピルには性感染症(STI)を防ぐ効果はゼロです。そのため、厚生労働省は粘膜同士の接触を防ぐ唯一の一次予防策として、コンドームを正しく着用することを推奨しています。
また、避妊方法として銅付加IUDは通常の避妊だけでなく、性交後120時間以内であれば緊急避妊としても使用でき、失敗率は1%未満と非常に低いことが日本産科婦人科学会の指針で示されています。
ホルモン放出型のLNG-IUSは避妊効果に加え、月経量を軽減する副効用も期待できます。
生活習慣の面では、喫煙や長時間同じ姿勢でのデスクワーク、脱水状態は血栓症のリスクを高めるため、適度な運動や十分な水分補給、禁煙を心がけることが重要です。
さらに、年に一度の婦人科検診で血圧や体重、既往歴を確認し、服薬状況についても医師としっかり共有しましょう。避妊はカップル双方にとっての課題で、「何を優先し、どこまで許容できるか」をパートナーと話し合うことが、最も現実的で安全な避妊方法の選択につながるでしょう。
低用量ピル・アフターピルに関するよくあるQ&A
- ピルを正しく飲めば中出ししても妊娠しませんか?
-
低用量ピルを毎日同じ時間に服用できている場合、避妊成功率は約99.7 %と非常に高く、妊娠する確率は0.3 %前後にとどまります。
それでも100 %ではないため、妊娠リスクをゼロにしたい場合はコンドームとの併用が安心です。
- 服用開始から何日目で「中出しOK」になりますか?
-
生理初日スタートなら服用1錠目から十分な避妊効果が得られるのが一般的です。日曜日スタートなど生理以外の日から飲み始めた場合は、最低7日間はコンドームを併用してください。
- 1錠飲み忘れて中出ししてしまいました。妊娠確率は?
-
24時間以内に気づいて追加で服用すれば、避妊効果の低下はほとんどなく、妊娠する確率は1%未満です。48 時間以上飲み忘れた場合は、避妊に失敗する確率が2〜9%に上がるため、7日間コンドームを併用し、必要に応じてアフターピルの服用を検討しましょう。
- 2日以上連続で飲み忘れた・シートを落とした場合は?
-
2錠以上の飲み忘れがあると、避妊効果は約91%まで低下します。もし飲み忘れに気づいたら、まず最後に飲み忘れた錠剤を1錠すぐに服用してください。その日の分の錠剤も通常どおり飲み、以降の7日間は必ずコンドームを併用することが大切です。また、性行為があった場合で72時間以内であれば、アフターピルの使用も検討しましょう。
- 中出し後72 時間以内ならアフターピルで間に合いますか?
-
レボノルゲストレル系の緊急避妊薬(ノルレボ®など)は、服用から72時間以内であれば約97%の避妊効果があります。さらに、120時間(5日)以内に服用できるエラワン®は、98%の高い避妊率が報告されています。ただし、どちらもできるだけ早く服用するほど効果が高くなるため、異変を感じたらすぐに医療機関やオンライン診療で処方を受けることをおすすめします。
- ピルを飲んでいればコンドームはもう不要?
-
ピルは妊娠をほぼ防げますが性感染症(STI)は予防できません。飲み忘れ時の“二重の保険”にもなるため、医師はコンドームとの併用を推奨しています。
- ピル服用中に不正出血があっても中出し可能?
-
ピルを正しく服用していれば避妊効果は維持されます。ただし、大量出血や痛み、発熱を伴う場合は、STIやその他の疾患の可能性があるため、性行為を控え、医師に相談してください。
- 中出し後にすぐシャワーで洗い流せば妊娠を防げますか?
-
洗い流しても膣内に入った精子は取り除けず、避妊効果はありません。ピルやコンドームなど、科学的に効果が証明された避妊方法を検討してください。
- ピルをやめた直後に中出ししたら妊娠しやすい?
-
ピルの服用をやめた後、通常は約2週間で排卵機能が回復します。妊娠を希望していない場合は、すぐに別の避妊方法を検討しましょう。
- 授乳中でも低用量ピル+中出しはできますか?
-
授乳中の避妊には、ミニピル(プロゲスチンのみのピル)やIUD(子宮内避妊具)が適しているとされています。一方、エストロゲンを含む一般的な低用量ピルは、授乳期には推奨されていません。使用を検討する際は、必ず医師に相談してください。
- 生理前・生理中の中出しは本当に安全?
-
ピル服用中は排卵が抑制されているため、生理周期にかかわらず避妊効果は一定です。飲み忘れがなければ時期を問わず高い避妊率が期待できます。
- 中出し後、妊娠していないか確認するには?
-
性行為から3週間以上経っていれば、市販の妊娠検査薬で妊娠の有無を調べることができます。それ以前に検査して陰性と出ても、時期が早すぎる可能性があります。陽性反応が出た場合や、生理が来ない状態が続く場合は、早めに産婦人科を受診して確認しましょう。