3月の「医療と介護の未来塾」は、第5在宅医療・介護連携推進センターと第2層生活支援体制整備事業報告会主催の市民公開講座として開催いたしました。新型コロナウイルス以降、5年ぶりの外部(和歌山城ホール)開催となりました。今月のテーマは、『100歳で夢を叶える』生き方。講師は、木村 美幸先生(『100歳で夢を叶える』 著者)(以下、先生)からご講義いただきました。参加者は、和歌山市のバス停が舞台となり、6万部と大ヒットした『バスが来ましたよ』の絵本作家でもあることから、58名と多くのご参加がありました。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。
先生より、自身のキャリアプランについてご紹介いただきました。まずは桐原書店時代に300万部のベストセラーを記録した「積木くずし」(1982年出版)を、朝日新聞時代には、医学書の最高権威シリーズをご担当されました。その後、フレーベル館にうつり、日本の児童文化である「キンダーブック」や「ウオーリーを探せ」等を手掛け、「アンパンマン」の生みの親である やなせたかし先生 と出会い、絵本にかける情熱・メッセージを受け取らせていただいたそうです。2022年に(一社)チャイルドロアクリエイトを起業され、絵本カタリストとして、教育・保育障害施設・企業等に様々な名作の絵本を通じて自己肯定感・創造力・課題解決力等の芽生えや育成を目的に講演をされているとのことでした。先生の夢は、生涯100冊の本を執筆することが夢であるとも話されておりました。
『100歳で夢を叶える』の執筆動機は、人生100年時代の今、60代でサラリーマン生活終止符した後の第二の人生設計に不安を抱く仲間も多い。そんな中、齢90歳にしていつも笑顔な日本を代表するパワフルな谷川俊太郎先生とお会いしたことを思い出し、求めていたヒントになるのではと改めてお会いしたそうです。この著書は、「生涯現役」の鉄人たち14名が90歳を超えてなお日々を活き活きと過ごし、周囲に活力と元気を振りまいている、今の関心事や取り組んでいる仕事、毎日の食事や暮らし方をインタビューして、そして、100歳で叶える夢を語ったレポート集であるとのお話がありました。14名のインタビューの中で話された長寿の秘訣についてご紹介していただきました。
①谷川俊太郎(詩人・90歳):「二十億光年の孤独」をデビュー作として以来、詩人として生計を立て、現在も朝日新聞に詩を書いている方。
・「秘密」を持ち続けること。それを自分の内部で持ち続けることが大切である。
・また、94歳の父と87歳の母の長寿のDNAをいただいていることに感謝している。
・パソコンがあったら僕は何でもするよとする前向きな意欲
・無人島にいくなら頭で詩を書くから何も持って行かない。
②道場六三郎(和食料理人・91歳):1993年放映の「料理の鉄人」の和食の鉄人と言われていた方。
・僕の料理は、「遊びと反逆」。そのときそのときのひらめいたものを形にしていくので、どんどん進化していく。
・僕がどんな美味しい料理を作っても奥さんが旦那様に作る家庭料理にはかなわない。
常に食べてもらう人の気持ちを大切にしている料理を作る思いやりの心。
③樋口恵子(評論家・90歳):男女平等、高齢者や子供の問題にて向き合ってこられた方。
・それぞれ違う老いがある。まさに「老いこそ個性的」。みんなそれぞれできる部分で付き合っていかねば。私たちは「非力」であるが、「無力」
ではない。
・微助っ人(ビ・スケット)として、世の中のちょっとした為になろうよ。
④野見山暁治(洋画家・101歳):昨年6月102歳で永眠された。
・描いているときりがない。「これでいい」と手放すことができない。描くことが面白いから続けられる。
・足腰が丈夫でないと、絵筆に力がはいらない。絵を描くときは立って描く。
・描くことが面白いから、今度生まれ変わってもまた絵を描いている。
⑤大村崑(喜劇役者・90歳)「元気ハツラツオロナミンC」でおなじみの方。
・86歳から妻に勧められたジムに週2回通い筋トレを始め、90歳にして自分史上最高の体になった。外出時には奥さんと手を握って歩いている。
・食事は和食。ビタミンCの多いブロッコリーが中心。あずきのスープ、納豆、ヨーグルトにフルーツ等を食べている。
・足腰が立つ限り、声が出る限り、頭が働く限り、「喜劇役者」としてずっと仕事を続けたい。最期は、102歳にドラマでおなじみの赤い霊柩車に
コスモスの花をたくさん敷き詰め旅立ちたい。
⑥大川繁子(保育士・95歳)60年間保育一筋で、3000人の子供を卒園させた方。
・何かを始めるのに遅すぎることはない。いつまでもわくわくする気持ちを忘れないこと。
⑦鮫島純子(エッセイ・100歳)渋沢栄一氏の孫。
・何事にも感謝気持ちをもって接する習慣をつけると自然と笑顔になる。日常の心の持ち方が大事。
・背筋を伸ばして歩く。睡眠の質にもこだわっている。
⑧室井摩耶子(ピアニスト・101歳)現役のピアニスト。
・100歳を過ぎた今も「これでいい」と思ったことはない。「もっと もっと もっと」と思う。「いま」を精一杯生きたい。
・95歳に転んだ際、慌てず「何とかなる」と思い、ずっと空を眺めるほどのパワフルでポジティブな考え方。
⑨玉川祐子(浪曲曲師・100歳)笑点にも曲師として出演。
・「やってあげる」じゃなくて「させてもらえる」ことが私の幸せ
・長生きの秘訣は、くよくよしないこと。つらいこと悲しいことはなるべく忘れて、物事をいいほうに解釈する。
⑩三浦雄一郎(プロスキーヤー/冒険家・90歳)世界七大陸最高峰スキー滑降を完全達成。70歳・75歳・80歳でエベレスト登頂に成功された方。
・一つの頂上に達したら、また次の頂上を目指したくなる。あきらめなければいつか夢の頂上に立てる。だめだったらやり直せばいい
・父(三浦敬三)は101歳で亡くなったDNAを引き継いでいる。
⑪杉浦範茂(イラストレーター・91歳)
・「絵」に間違いはない。絵は自由でやりたいように描きたいように描けばいい。
・人間万事塞翁が馬。肝に銘じて生きてきた。
⑫暉峻淑子(経済学者・95歳)日本を代表する経済学者
・自分に関係のない出来事なんてこの世には何もない。そのうちのどれを選んで自分のアイデンティとするか。
⑬渡辺貞夫(サックス奏者・90歳)3年先までコンサート予定がはいっている奏者
・毎日8時間練習している。自分の音を納得できるまで突き詰めていきたい。
・楽なものって面白くない。好きなことをやっているから夢中になれる。
⑭青木悦子(郷土料理研究家・90歳)金沢でクッキングスクールを開き、1階レストラン「四季のテーブル」で加賀料理を提供している。上戸彩主演
の「武士の献立」の料理監修もされていた方で。
・これからも工夫しながら精魂込めて、家庭の「真心料理」を後世につないでいきたい。まだまだ感動を伝えていきたいという情熱がある。
先生より、鉄人たち14人からみえる5つの共通点について示していただきました。
その1:考え方がポジティブで明るい。
その2:ご自身の仕事に誇りもっている。
その3:自分は自分、人と自分を比べない。
その4:生まれ変わってもまた同じ仕事をしたい。
その5:丈夫な身体と寿命を与えてくれた両親に感謝
最後に、長寿の秘訣として鉄人たちが取り組んでいる運動、食生活をご紹介していただきました。
・「よく歩く、足腰を鍛えている」
大村崑:86歳でジムに入り、健康年齢は驚異の55歳である。
道場六三郎:平日でも4000~5000歩を歩く。週2回のゴルフで10000歩以上を歩く。
・「ソウルフード 納豆を常食している」
三浦雄一郎:サバ缶と納豆を入れて一緒に食べている。
青木悦子 :南高梅とわさびを入れて食べている。
『100歳で夢を叶える』考え方や生活について分かりやすく説明していただきました。
木村 美幸先生、貴重な大変ためになるご講義ありがとうございました。