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未来塾

「高齢期における口腔健康管理」~災害時口腔ケアも含めて~

6月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場およびZoomのハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「高齢期における口腔健康管理」~災害時口腔ケアも含めて~で、講師は加藤 恭子先生(和歌山県歯科衛生士会 認定歯科衛生士)(以下、加藤先生)でした。今月参加者は、Zoom参加者:13名(最大)・なるコミ聴講:24名の合計37名でした。
ご参加いただきました皆さま、有難うございました。  

 テーマ別に、1. 高齢者の口腔の特徴、2. 口腔の健康状態の評価の視点、3. 災害時の口腔ケアに分けてご説明していただきました。
 1. 高齢者の口腔の特徴
 口腔健康管理は、口腔機能管理(虫歯・歯周病の治療、義歯の調整)、口腔衛生管理(歯石・歯垢の除去)、口腔ケア(歯磨き・義歯清掃、口腔の機能訓練)から成り立っています。特に、口腔ケアには機能訓練も含まれることを知ってほしいとのお話がありました。オーラルフレイルは、歯がない・義歯が合わない等で、柔らかい食事になり、かむ機能が低下しさらに噛めなくなるという悪循環の状態であります。症状として、誤嚥、舌や頬をかむ、食べこぼす、食べかすが多い、舌苔等がありますとの紹介がありました。加藤先生より、いくつかの歯科データーを示していただき、平成元年から始まった8020運動も、年々増加傾向で令和4年では50%以上まで達成できている反面、高齢になるほど20歯以上の歯を有する人数が減っていることが理解できました。何でもよく噛んで食べるには20歯が必要であり、時折高齢の方より「私、何でも食べられます」という人も多いが、実際はやわらかい物が多い為、安易に鵜呑みにせず、フランスパンやスルメイカ等の固い具体的な食べ物を例に挙げ、しっかりとアセスメントしていくことが重要ですとのお話がありました。歯が欠損した場合、差し歯や部分入れ歯等の使用で補完するが、80歳以上の約3割が総入れ歯であります。訪問時、義歯使用を確認する際、喋っているだけでは義歯を止めているバネが見えない、また最近ではバネがない義歯もあるため口を大きく開けてしっかりと確認することが大切であると話されました。義歯と認知症や転倒との関係について、20歯以下で義歯未使用の際、使用者との比較ではどちらも約2倍のリスクがあることを示されました。認知症では、咀嚼により脳への血流増加から脳機能の活性につながる、転倒では、奥歯のかみ合わせと重心との関係性が考えられていますとの話がありました。
 2. 口腔の健康状態の評価の視点
 令和6年度介護報酬改定において新設された口腔連携強化加算を紹介していただきました。加算の背景として、介護給付費分科会データーより、要介護高齢者の内、約65%が歯科治療を必要としていたが、治療を受けた高齢者がわずか約2.5%であったことや担当する歯科医師に伝えるべき情報が取得できていない介護支援専門員が約70%いることを示されました。目的は、歯科医師との連携を推進し、利用者の口腔機能の向上や誤嚥性肺炎の予防でありますとのお話がありました。厚生労働省より、評価の視点として、開口、歯や舌の汚れ、歯肉の張れ、出血、噛みしめ、むせ、口腔内残留等を示され、算定する事業者は各評価の有無や可否を判断し、担当の歯科医師や介護支援専門員と情報共有することで月1回50単位算定できますとの話がありました。
 3. 災害時の口腔ケア
 阪神・淡路大震災における『関連死』(921人)の死因別割合を示され、約25%が肺炎であり多くは誤嚥性肺炎であったことから、口腔ケアで災害関連死を防ぐことが重要視されるようになりました。災害時には、水不足で歯を磨くことを控えることで汚れがひどくなり、ストレスや疲労、免疫力低下により、誤嚥性肺炎やインフルエンザにも罹患しやすくなります。そのため、災害時は特に口腔ケアへの注意が必要になりますとお話がありました。水やブラシが不足しているときの口腔ケアとして、歯ブラシがないときは、ハンカチ、ガーゼ、タオル ティッシュペーパーなどを指に巻きつけ歯についた汚れを取る。歯ブラシも歯磨き剤もある際でも、歯磨き剤は研磨剤が入っており、口腔内が乾燥するため使用せず、少量の水で歯ブラシを浸しながら使い、歯ブラシの汚れはティッシュ等でふき取るという方法を紹介していただきました。1回のうがいの水分量は、ペットボトルのキャップ1杯分で、「ぶくぶくうがい」から「がらがらうがい」の順番で行うこと、また食後のお茶を代用できることも知ってほしいですと説明がありました。また、デンタルリンスとして、様々な種類があるが、液体歯磨きと洗口液について、ブラッシングの有無の違いを知って災害時に役立ててほしいとの紹介がありました。避難生活が長くなり、ストレスにより唾液の分泌がなくなりがちになるため、唾液を出して口の中を潤す効果として、耳下腺マッサージや顎下腺マッサージ、舌下腺マッサージを紹介していただきました。
 加藤先生、貴重なご講義ありがとうございました。

今回、口腔衛生の保持は予防や栄養状態の維持などの面で、肺炎やその他の健康状態の悪化を防ぐための第一歩として重要であることが理解できました。最近、加算点数を付けるなど、国も栄養・歯科衛生にも力を入れているようになってきました。現在、介護支援専門員に栄養ケアや口腔内ケアまで、幅広くより専門性が求められてきています。今回、歯科衛生士の観点をもちながら、和歌山市で介護支援専門員として在宅訪問でご活躍されている加藤先生のご講義はより身近に感じた方も多かったのではないでしょうか。加藤先生とご参加されている皆様とが相談できるような関係性に発展できればと思っています。つなぐこともできますので、お気軽にご相談ください。
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