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未来塾

「風邪」

7月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場およびZoomのハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「風邪」で、宇都宮病院医局長 消化器内科専門医 川西 幸貴よりの講義でした。今月参加者は、Zoom参加者:28名(最大)・なるコミ聴講:65名の合計93名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。  

 風邪と診断するアプローチは、ウイルス性であるため、咳と鼻汁と咽頭痛が急性に1~2 日程度の経過で同程度発現することであります。風邪以外で考えるには、鼻・咳・喉の3症状の優位性から、細菌性と診断することで抗生剤を使用します。ウイルス性感染から細菌感染に至るケースもあるため鑑別が大事でありますと話されました。風邪の経過として、ウイルス性のため抗生剤を使用せずに1週間程度で自然治癒されますが、中には気管の炎症が長引いて、『感染後咳嗽』として咳だけが1か月程度続く人もいますので注意して欲しいですとのことでした。高齢者の発熱チェックポイントでは、肺音の呼吸音の左右差、膿尿なしでも尿路感染症はある、浮腫の際は常に蜂窩織炎を念頭に置く、人工物チェック(人工関節、人工弁、骨折後プレート・ボルト、シャント、CVポート)を挙げられました。ウイルス感染と細菌感染の違いについて、細菌感染は原則として単一の臓器に一種類の菌の感染であるため、鼻水を流した咽頭痛や咽頭痛は咳が伴わないなど明確に示していただきました。膿性鼻汁と膿性痰について、膿性鼻汁とは、鼻風邪による鼻水であるため細菌性とは言いがたいが、膿性痰は細菌性であるので知っておいて欲しいとの説明がありました。漢方薬として、咳:麦門冬湯、鼻汁:小青竜湯、咽頭痛:桔梗湯を挙げられ、どの症状が一番つらいか診察し2種類で処方されているそうです。妊婦・授乳中の方の処方では、どの薬も100%安全ではないので、授乳直前、直後にしてもらいたいですとのお話がありました。
 川西より、様々な感染症の診断基準や病状についての注意点等を紹介してもらいました。
  1. 溶連菌:38度以上の発熱や圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、年齢等を点数化し抗生剤の開始基準としています。
  2. 咽頭痛:嚥下時痛が伴う。嚥下時痛でない際は、咳痛、心筋梗塞、時には大動脈解離まで考えています。
  3. 亜急性甲状腺炎:咽頭痛があるが、鼻汁や咳は出ません。甲状腺機能異常が数か月間続くため、数か月間倦怠感に悩まれますが、自然軽快して
いきます。
  4. 慢性咳嗽の三大原因:咳喘息、上気道咳嗽症候群、GERD(胃食道逆流症)です。他に、結核、百日咳、ACE阻害薬等があります。
  5. 非定型肺炎の診断基準:(1)60歳未満、(2)基礎疾患がない、(3)頑固な咳、(5)白血球数10000未満等 。細菌性肺炎と処方する薬が違うので注意して欲しい。
  6.  胃腸炎と誤診すると命取り疾患として、虫垂炎、心筋梗塞(下壁の心筋梗塞は 嘔気・嘔吐を伴う)、糖尿病性ケトアシドーシス、小脳出血があります。
 川西より、超高齢化社会に直面する医療者の心構えとして 1.耐性菌の世界的拡大、2.我が国は世界一の少子高齢化、人口減少社会、3. Atypical is typical(非典型的なことが典型的である)として風邪かどうかの判断が難しいため、その不確実性を上手に伝える、4.高齢者は典型的風邪の3症状を満たすことが少ないと示してもらいました。高齢者の風邪の罹患率について、乳幼児の四分の一程度であるが、重症感染症になり易いため発熱には注意が必要であります。鼻症状においては、心血管系に影響を及ぼす薬剤による鼻炎や、α・β遮断薬、ACE阻害薬等の降圧剤により鼻づまりを引き起こすことがあるため、常に薬剤性を念頭に置きながら診察していますとの話がありました。高齢者の明確な喉痛の風邪は珍しいため、ヘルペスや咽後膿瘍、咽頭結核、大動脈解離等の他の病気も視野に入れておく必要がありますとのことでした。また、高齢者の3大感染症として、肺炎、尿路感染症、胆道系感染症を挙げられました。さらに、尿路感染症や偽痛風、大腿骨頸部骨折等で診察に来られる高齢者が多いが、診察に至った原因を知ることが大切であると話されました。
参加者より、市販で販売している風邪薬服用についてのメリット、デメリットについて教えて欲しいと質問がありました。川西より、ウイルスに対し、風邪薬は効き目がないが、体力消耗につながる過度の熱やせき・のどの痛み・鼻水などのつらい症状をやわらげ、少しでも楽になりたいのであれば、服用しても問題ないですとの回答でした。
川西先生、遅くまで貴重な講義ありがとうございました。

 今回、ウイルス感染と細菌感染の症状の違いや抗生剤の使用の有無について学ぶことができました。日頃より訪問診療等で関わりのある施設スタッフやケアマネジャーも数多く参加されました。病気の診断についても、あらゆる観点から診察されていることが身近に感じられたと思われます。ご担当の患者様でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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