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未来塾

「高齢者急変時の観察ポイントと対処法」

8月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場およびZoomのハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「高齢者急変時の観察ポイントと対処法」~急変の予測を含めて~で、宇都宮病院 看護部長 芝田 里花よりの講義でした。今月参加者は、Zoom参加者:22名(最大)・なるコミ聴講:42名の合計64名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。  

 テーマ別に、1.高齢者の医療的特徴、2.急変とは、3.急変対応、4.事例に分けての説明でした。
 1.高齢者の医療的特徴
 高齢者の医療的特徴について
(1).慢性疾患の多さ:複数の疾患を同時に抱える、進行が緩やかで自覚症状が少ない。
(2).薬剤感受性の変化:薬の代謝・排泄能力が低下、多剤服用、服薬管理の困難。
(3).身体機能の低下:免疫力・回復力の低下、栄養状態の悪化。
(4).認知機能・精神面の変化:認知機能障害の影響、精神・心理的脆弱性(孤独・不安)
 2.急変とは
 芝田より、急変の定義は「急激な健康状態の悪化」であり、よく起こる急変例として、意識障害、呼吸困難、胸痛・腹痛、発熱・嘔吐・けいれんであるとのことでした。
高齢者の病状が急激に悪化する理由について
(1). 予備力の低下:発熱・脱水・感染などの些細な変化でも、全身に影響が出やすい。
(2).複数の疾患の連鎖:心不全の人が肺炎になるなど。
(3).症状が非典型的症状:なんとなく「元気がない」「食欲がない」など症状が曖昧。
(4).免疫力・回復力の低下:感染症に対する抵抗力が弱く、治癒にも時間がかかる。
(5).薬の副作用や相互作用:多剤服用により、副作用や相互作用で急変することがある。
(6)環境の変化に弱い:自宅からの些細な入院でも、せん妄状態に陥ることがある。
急変や危険な徴候でのキラーシンプトムの具体例
(ア)呼吸:呼吸数の増加・減少、努力呼吸、SpO2の急激な低下、喘鳴
(イ)循環:顔色が悪い、皮膚の蒼白またはチアノーゼ・冷感、徐脈・頻脈、低血圧
(ウ)意識・外見:視線が合わない、朦朧としている、興奮
(エ)その他の重要な徴候:いつもと違う違和感、苦しそうな表情、急な食欲不振
芝田より、急変の発生は予測できるとして、日頃からの状態を把握しておくことで、体調の変化・症状の悪化・循環動態の変化に気づくことが大切とのことでした。
 3.急変対応
 急変時の対応手順について
(1).その場を離れず応援を呼ぶ。(AEDの手配も忘れずに)
(2).意識・呼吸の確認(呼吸がなければ胸骨圧迫とAED使用)
(3).119番通報と情報整理(現在の状態を簡潔に伝える)
(4).家族への連絡(入院や延命処置の判断・事前の意向の確認と連絡体制)
(5).報告書の作成 急変の経過を時系列で記録。(急変の経過を時系列で記録)
救急対応手順で、入所者様の状態が予想されていた場合であっても、かかりつけ医か救急要請かの判断が難しいこともあるため、家族・主治医も含めてしっかりと話し合っておく必要があるとのことでした。
あわてないための日頃からの準備として
(ア)時間ごとの指揮命令系統・役割分担を決めておく(緊急対応時の職員のリーダー)
(イ)施設内連絡順(日中と特に夜間)
(ウ)入所者・家族等の情報整理・意向確認
(エ)配置医師、協力医療機関との相談(時間帯等別の対応)
(オ)医療機関への搬送の判断・搬送方法・持ち物チェックリストの作成。
芝田より、緊急時のNG行動は、パニック・放置・独断であり、報告・連絡・相談の徹底やチームでの連携が命を救うため、訓練しておくことが大切であるとのことでした。
4.事例
 脱水、重症胆のう炎、せん妄と診断された高齢者の事例の紹介でした。高齢者の脱水の原因は、水分制限や利尿剤の服用等であり、観察ポイントとして、前腕、胸骨上皮膚をつまみあげるツルゴール反応の紹介でした。胆嚢炎は高齢者に多く、敗血症に至りやすく、進行が数時間~数日で急速に起こることもあります。症状が非典型であり、高齢者が、高温で悪寒戦慄ときは、胆嚢炎を疑います。認知症のある高齢者では、行動変化が唯一の徴候であるので日頃から観察することが大切であるとのことでした。せん妄においては、認知症との違いを理解しておくことが、大切であります。また、せん妄をきたす急性疾患では、感染症が多く、低血糖や硬膜下血腫、多剤服用はせん妄のリスクを大幅に上げますとの紹介でした。さらに、ビタミン欠乏症や低栄養でも起こることがあるので知ってほしいとのことでした。
 最後に、芝田より、急変対応で一番大切なことは急変を未然に防ぐことであり、「その人」を知り、いつもと違うことに気づき対応することが重要です。その人のバイタルサインの正常値の数値を知って判断していくことが大事であります。対応するときは、「その人」のことは自分が一番よく知っていると思えるくらい関わりもをもち、知ろうとする心つもりが必要であると感じていますとのことでした。
 芝田看護部長、遅くまで貴重なご講義ありがとうございました。

 今回の、参加者はケアマネジャーや訪問看護以外にも、日々現場で従事されているデイサービス職員やヘルパー等様々な職種の方が参加してくれていました。日々の状態を知ることが、急変の発生を予測でき、命を救えることを学びました。また急変対応や日頃からの準備や訓練の大切さも理解できました。参加者の方より、「芝田さんの今までの実践現場の経験が伝わってきました。現場も知っている素敵な方です」との声も届きました。
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