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未来塾

高齢者の隠れ心不全

 9月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場およびZoomのハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「高齢者の隠れ心不全」で、宇都宮病院非常勤医師 循環器内科専門医 島本 幸子よりの講義でした。今月参加者は、なるコミ聴講:15名、Zoom参加者:13名(最大)の合計28名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。  

 テーマ別に、1.心不全とは、2.心不全の経過と分類、3.取り組みに分けての説明でした。
1.心不全とは、
心臓に何らかの異常があり、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態ですとの説明がありました。
心臓が悪くなる原因
① 血圧が高くなる病気(高血圧)
② 心臓の筋肉自体の病気(心筋症)
③ 心臓を養っている血管の病気(心筋梗塞)
④ 血液の流れを正常に保つ弁が狭窄、また閉まらない病気 (弁膜症)
⑤ 脈が乱れる病気(不整脈)
⑥ 生まれつきの心臓病(先天性心疾患)
島本より、救急搬送の循環器疾患患者の原因の多くが生活習慣病であります。予防を心掛けていくことが大切でありますとの話がありました。
 2.心不全の経過と分類
 心不全のリスク因子(リスク因子~重症)をステージ別(A~D)に分けて説明してもらいました。ステージAのリスク因子は、危険因子として高血圧・糖尿病などがある状態です。ステージBは心臓に変化があるが、症状がない状態です。A・Bとも隠れ心不全です。ステージCは心臓の変化や症状もある軽症から中等症、ステージDは難治性心不全の重症に分かれています。一度ステージが上がってしまうと元に戻すことは難しいので、ステージを上げないことが重要です。最近は、心不全をコントロールする薬剤も充実しているため、適切なタイミングで早期に発見することが大切でありますとのことでした。
 島本より、心不全の自然経過の図表を用いて、①ご高齢の方で、少しずつ心不全が進行の都度入退院を繰り返し、利尿剤や在宅酸素を使用しながら自宅で看取った方、②認知症状のため、自宅で上手く治療できず、入院しそのまま看取られたケースを紹介してもらいました。心臓は、急激に悪くなり数日で命に関わるパターン、徐々に悪化するパターン等様々な経過を辿っていきます。そのため、心不全の発症予防が大切でありますとの話がありました。
 3.取り組み
 現在、島本が勤務している病院の取り組みとして検診時や診察時に患者に、チェックボックスを用いて、「高血圧や血糖値、腎臓、心臓により治療を受けていませんか」等のアンケートを実施しているそうです。隠れ心不全を掘り起こし、早期に心不全を発見することで予防につなげることが目的とのことでした。他にも、心不全を診断するために使用される重要な血液検査のマーカーとして、採血時にNT-proBNPの値を検査しているとの話がありました。分類として、正常値は55以下で125までなら低リスク群として分類されます。900以上は心不全発症、むくみ、息切れを起こしていると考えられます。数値は、治療や生活習慣を注意することで下がりますので、指標としていただきたいとの説明がありました。島本より、検査対象は、高齢者のみならず、糖尿や血圧の治療実施の40~50歳台の方にも勧めており、一部にNT-proBNP高値の方もいますとのことでした。
 最後に、島本より、心不全パンデミックについての紹介がありました。高齢になるほど心不全の罹患率は高くなります。日本は世界一の超高齢化社会であるため、高齢者の増加に伴い、心不全患者さんが大幅に増加することが懸念されており、循環器学会でも警鐘をならしているそうです。心不全パンデミック状態になると、入院が必要な心不全患者さんであふれ、病院が患者さんを受け止めきれなくなる事態や、莫大な医療費がかかることなどが予想されます。そのため、運動や食事内容、喫煙等の生活習慣に注意し、病院との良い距離間を保ちながら、人生100年時代を過ごしていただきたいです。また、医療介護関係者で携わっている方のご家族さまにも、心不全の啓発を促し、予防してほしいですとの話がありました。
 貴重なご講義ありがとうございました。

 生活習慣を見直すことで、心不全の予防につなげられることが理解できました。また、検診を通じて心不全の啓発を行っている取り組みも学ぶことができました。今回も、沢山のケアマネジャーやヘルパーの参加が多かったです。ヘルパーの方より、「すごく身に沁みました。勉強になりました」との講義後も参加者と話されていました。この勉強会を通じて、心不全の予防や危険性など、携わっている関係者への周知を促してもらうことも予防の一歩になると考えております。

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