今年最後の11月「医療と介護の未来塾」も、なるコミにて会場およびZoomのハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「在宅での事例からみる認知症の方へのかかわりについて」で、訪問看護リハビリ手to手 看護師 大石 祐司 先生よりの講義でした。今月参加者は、なるコミ聴講:16名、Zoom参加者:18名(最大)の合計34名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。
テーマ別に、1.認知症の現状、2.認知症の基礎知識について、3.事例を通してにわけてご説明していただきました。
1.認知症の現状とは
認知症の歴史について、7世紀の万葉集にも認知症と思われる内容の記載があります。医療としては、1907年にアルツハイマー氏の老人班(脳に残るゴミ)の発見により認知症として病名・診断がつくようになりました。日本での認知症学は、昭和30年頃(1950年代)で、まだ100年も過していない新しい分野ですとの紹介がありました。また、2022年の総務省高齢者統計より、H14年度厚労省将来推計の高齢者人口者数の差異は、6万人程度であったが、認知症の推計数は675万人に対し、471万人と想定数より大幅に少ないことを示していただきました。大石先生より、軽度認知症の方が存在することに加えて、教育歴や教育レベルの向上が有病率の低下の原因になっているのではないかと考えていますとのお話がありました。認知症研究の第一人者の長谷川和夫先生(認知症者)の手記を抜粋し、認知症の方は、言葉の理解はできている、馬鹿にされたり、寂しかったりの感情に伴った記憶は残りやすく、常に不安である等の実際の感じ方について紹介していただきました。弄便行為の事例を用いて、便がでて不快に感じている認知症の方とケアにあたる職員との困っていることの違いについて説明していただきました。
2.認知症の基礎知識
認知症の基礎知識についてご講義いただきました。
(1)認知症とは
疾患名ではなく、精神機能 (注意、実行機能、記憶等)が何らかの脳障害により、回復不可能な形で損なわれた状態です。また、アルツハイマー型・レビー小体型等の4大認知症に大きく影響する疾患として、神経変性疾患と脳血管障害があります。他にも、感染症や腫瘍、アルコール中毒なども原因でありますと話されました。認知症の中核症状は、脳の萎縮されている部位の症状のみのため、違う症状の際は主治医に相談してほしいです。
(2)代表的な認知症について
(ア)アルツハイマー型認知症
<起因> 側頭葉内側から始まる脳の神経細胞の脱落、および変性。
<経過> 発症後、緩徐に進行 →急な変化は違う原因。
<状態>・新しいことが覚えることが苦手(前向性健忘)、忘れていく
・忘れたことは想像・創作でつなげる。間違いは取り繕い、妄想で補う。
・空間認知機能の低下、図形模写、手指の模倣が徐々に困難
<経過> • 初期:忘れ物が目立つ。
• 中期:BPSD(徘徊や暴言、妄想など)。実行機能障害が出現。
• 後期:パーキンソン症状等の所見が顕著。約10~15年期間が長い。
(イ)レビー小体型認知症
<起因> 前頭葉・側頭葉から始まる脳の神経細胞の脱落、および変性。
<経過> 緩徐に発症し、進行。
<状態> 初期には記憶障害は目立たない。
幻視・パーキンソン症状・自律神経障害・レム睡眠行動障害の出現。
(ウ)前頭側頭型認知症
<起因> 前頭葉・側頭葉から始まる脳の神経細胞の脱落および変性。
<経過> 緩徐に発症・進行。
<状態> 性格の変化と社会性の喪失は早期から目立つ。
常同行動(特定の目的が無く、同じ動作や行動を繰り返し行う行動)。
脱抑制(状況に応じた衝動や感情を抑えられなくなる状態)の出現、過食・偏食。
大石先生より、中核症状の進行でおこる様々なBPSD(行動・心理症状)の割合を示していただき、多い順にうつ状態(97%)、妄想(62%)、易刺激性(60%),不快感(53%)が出現しやすいと示していただきました。対応方法として、言葉で表せない苦痛がないか、薬物の副作用や離脱症状の有無・不適切な環境やケアの確認等を検討していくことが大事でありますとのお話がありました。
3.事例を通して
大石先生が、在宅で担当された事例についてご紹介いただきました。
在宅酸素を使用し、最期まで自宅での生活を希望されたアルツハイマー型認知症の方です。認知機能面では、①短期記憶障害、②日時の見当識障害、③注意の持続能力低下、④判断能力低下が見受けられ、酸素カニューレを忘れて呼吸苦を訴えてくることもあったそうです。大石先生が行ったケアは、①短期記憶障害では、会話の中で間違いを指摘せずに、忘れているときは会話の中で補う。②見当識障害では、「今日は、看護師の大石です。何月何日です。」という風に日時に関わる話を会話に盛り込む。③持続能力低下では、短く話を切って間をあける。④判断能力の低下では、本人にも何度も説明するが、家族にも協力をお願いする等を心掛けていたそうです。他にも、役割として雨戸の開け閉めの依頼、24時間同居中である家族のケアにも力を入れたそうです。その後、骨折により入院を余儀なくされ、在宅でのケアは終了となりましたが、同居家族様からは「本当にありがとうございました」と深く感謝のお言葉をいただいたそうです。
最後に、大石先生より、ケアのポイントで大切にしていることは、苦手なこと何かをしっかり把握し、苦手なことに対しケアを行っていく。生活を行っていくために過剰なケアをしないことを大事にしています。また、ケアに困ったときは、その問題の主語が誰なのかを認識することが大切であります。実際、ケアスタッフ側が中心となっている現場も多く見受けられます。ご本人様のストレスを少しでもなくし、その人らしく最期を迎えて人生を全うしてほしいと願っていますとのお話がありました。
大石先生、貴重なご講義ありがとうございました。
今回は、様々な職種の方が参加され、関心の高かった研修になったと思います。大石先生の、ご担当の事例からも日々のケアに対する考え方を知ることができました。また「あたりまえのケアをあたりまえに行うことが一番難しい」との言葉が心に残りました。講義終了後に、多くの参加者の方が大石先生との名刺交換をおこなっていたのが印象的でした。