受付時間 / 午前 9:00-12:00 午後 14:30-17:30
 休診日 / 土曜午後・日曜・祝日 (急患は随時受付)
MENU

お知らせ

口腔ケアの重要性について

2022年3月医療と介護の未来塾を開催いたしました。2月の未来塾は、新型コロナウイルス感染防止により、延期とさせていただきました。2月の内容は、また日程調整の上改めてご案内させていただきます。3月の未来塾も、前年同様、万全な感染対策を行いながら、なるコミ聴講(限定20名)とZoom研修でのハイブリッド研修を行いました。今月のテーマは、「在宅患者の口腔ケアの重要性」でした。講師は、一般社団法人和歌山県歯科衛生士会(顧問 稲垣 厚子先生・副代表 山東 理沙先生)にご講義いただきました。
今月の参加者は、Zoom参加者:16名(最大)・なるコミ聴講:9名:合計25名でした。
ご参加された皆さま、有難うございました。

 今月は、稲垣先生からお口の働き・歯周病と様々な病気と関係について、山東先生から歯科衛生士による訪問の実状について、それぞれご講演賜りました。まず、口腔ケアとは、歯磨き等のお口の中を清潔にする口腔清掃とお口の体操・マッサージ等筋肉にアプローチを行うことであり、お口の機能を高める口腔リハビリテーションもあり、双方に働きかけることによりに、QOLの向上に繋がるとの説明がありました。口は、上下の歯だけでなく、口の周りの筋肉や舌、唾液も大切であり、咀嚼や飲み込み、話す・歌う・表情を作る・顔の形を整える・呼吸をする等の働きがあるとご説明いただきました。栄養摂取のためには、しっかり咀嚼し飲み込むことが重要ですが、高齢者の方で何でも食べているとおっしゃる方でも、嗜好品の偏りや、かみ合わせが悪く丸のみ状態の方も多く、低栄養になっている方もいらっしゃるので注意して欲しいとのことでした。また、口腔内を不潔にすることで、虫歯や歯周病などを引き起こすだけでなく、頬や舌の筋肉の衰えから、食べ物と口腔内の菌(唾液)が誤って肺の中に入り、誤嚥性肺炎等の重篤な状態を引き起こしてしまうこともあるので、清潔に保つ必要があると話されました。
次に歯周病と様々な病気の関係について説明されました。歯周病があることで、インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染拡大につながりやすくなり、実際、口腔ケアにより、インフルエンザ罹患率が1/10に減少したデーターもあるとのことでした。
歯周病は心筋梗塞や脳梗塞とも関係が深く、その毒素により血管が詰まりやすく、報告書にも、血管内に歯周病菌が発見された例があると説明がありました。糖尿病に関しては、口腔内の血管が脆くなることで、歯周病に感染しやすく、またインスリンの効き目も悪くなる負の連鎖が起きるとのことでした。稲垣先生より、コロナ禍の中、歯医受診を嫌がる高齢者の方には、この時期だからこそ、しっかり歯周病の予防に努めることが大切であると教えていただきました。
 続いて山東先生より、歯科衛生士による訪問の実状についてご講演くださいました。先生より、歯科では、「往診」と「訪問診療」の区別がないとのことでした。訪問診療を実施する上で、①訪問診療の対象となる状態か②訪問できる場所か③訪問診療で対応すべき治療内容か④連携すべき医療・福祉関係者に連絡しているかの4つの注意点を挙げられました。実際の依頼として、最近は,インターネットで検索して遠方にお住いのご家族からの依頼もあるそうです。依頼後にケアマネジャーとの連携の為、服薬内容やADL・既往歴・生活歴などが分かる利用者基本情報、介護保険証情報、時間調整の参考に利用する週間サービス計画表または利用票の情報提供をいただくこともあるので協力してほしいとのことでした。歯科衛生士の訪問までの流れとして、初回は歯科医師訪問と同行し、歯科医師からの指示の元、訪問が可能になり、その後も定期的な歯科医師の指示により継続していくことが可能とのことです。診療報酬については、要介護認定を受けているか否かにより、請求する保険制度(医療or介護)に違いがあるので注意して欲しいとのことでした。
 実際に関わった2事例をご紹介くださいました。まず、「OHAT」というアセスメントツールを用いて歯科衛生士が口腔ケアで介入した、有料老人ホーム入居者の介入前と3か月後の比較変化についての紹介でした。OHATとは、「Oral Health Assessment Tool」の略で、口腔環境を数値化、口腔問題を共通言語化し、連携ツールとして看護、介護スタッフでも,客観的に口腔の状態を見て判断できるツールであるとのことです。週1回歯科訪問診療を行い、「口唇」「舌」「歯肉/粘膜」「唾液」「残存歯」「義歯」「口腔清掃」を評価について、説明があり、「残存歯」のように金銭的負担やご家族の考え方の問題から訪問歯科だけでは、上手くいかないケースもある中、ほとんどの項目で評価が改善されていました。中でも、「歯肉」に関しては、7人中6人は介入前においては病的であったにもかかわらず、3か月後には全員健全になっていることには驚きました。次に、30代女性、摂食嚥下障害を有する方に対しチームで行った摂食機能療法のケースの紹介でした。摂食機能療法は①歯科疾患の治療②摂食嚥下リハビリ③口腔ケアの3本柱からなり,どれが欠けても成り立たないことを知りました。当初は、スライスゼリーの飲み込みも上手くできなかった方であったが、嚥下を得意とする耳鼻科医と言語聴覚士、理学療法士や訪問看護師とのチーム連携により、約2年後には、上手く飲み込むことができるようになり、時折、笑ったような顔も見せるようになったとのことでした。
最後に、歯科衛生士は「口腔の衛生管理」と「口腔の機能の管理」をする仕事ではあるものの、訪問の限度が週1回であり、事例からも分かるように、介護者や他職種の方との連携により何倍もの相乗効果が表れるとのことです。その為、患者さんを支えるチームの一員として考えてもらいたいとの依頼がありました。
 今回の研修により、歯科衛生士が、様々な職種との連携による重要なチームの一員であること、また口腔ケアが、QOLの向上のみならず誤嚥性肺炎などの全身疾患の予防、全身の健康状態の維持・向上にもつながる大切さを知る機会となりました。
 一般社団法人和歌山県歯科衛生士会、顧問 稲垣 厚子先生・副代表 山東 理沙先生、ご講演ありがとうございました。
ページ上部へ