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「心不全ってどんな病気?地域で支える皆さんが悪化のサインをみつけよう‼」 ~心不全アラートと心不全手帳を活用した症例と患者支援の実際~

8月の未来塾も、なるコミにおいて感染対策には十分注意しながら、ハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「心不全ってどんな病気?地域で支える皆さんが悪化のサインをみつけよう‼」~心不全アラートと心不全手帳を活用した症例と患者支援の実際~」でした。講師は、和田 直子先生(日本赤十字社和歌山医療センター 看護部 心不全看護認定看護師)(以下、先生)からご講義いただきました。今月の参加者は、Zoom参加者:14名(最大)・なるコミ聴講:9名:合計23名でした。ご参加された皆さま、有難うございました。

今月も、①心不全ってどんな病気、②心不全の治療、③心不全の症状と事例、④心不全手帳の使い方に分けてわかりやすくご講義いただきました。
① 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を紹介され、心不全とは一般的に心臓のポンプ不全により,息切れやむくみが悪化することで,生命を縮める病気であると話されました。例として、風船を心臓に見立て、硬くて拡がらない拡張障害、伸びきったゴムのような収縮障害をわかりやすく説明していただき、うっ血し全身に必要な血液を送り出せないことで様々な心不全が出現することが理解できました。心不全ステージの4分類として予備段階のAとB、症候性心不全のCとDを示され、慢性心不全は急性増悪を繰り返しながら悪くなる。また、予防のタイミングは3回あり、順に生活習慣病にならないようにする、心筋梗塞を起こさないようにする、心不全を発症しないようにすることが大切であると話されました。日本の推定心不全患者数のデーターを示され、2040年までは人口増加とともに約140万人と増加傾向となるため、急性期病院のみでは対応が難しく、様々な機関で心不全患者を支えていく仕組みを作っていくことが必要であると話されました。今回の「和歌山心不全手帳」も、重症化予防のための仕組みつくりとして作成したとの紹介がありました。心不全の症状を高齢者でも理解しやすい信号の黄色(注意)・赤色(危険)に見立てたとのことで、判断基準は、黄色アラートで、訪問看護等への相談やかかりつけ医の受診、赤アラートで、救急車による急性期病院搬送と説明しているそうです。
② 心不全の治療としては、順に症状の治療、原因の治療、予後改善の治療を行っていくと話されました。症状の治療として、体内の水分を減らしうっ血症状改善を図るために利尿薬を使用。心臓の収縮力不足には強心薬を使用することもあるとのことでした。心不全の原因として、虚血性心疾患、弁膜症、高血圧等を挙げられました。原因の治療として、服薬以外では、血管や弁を広げるカテーテル治療や心房細動の手術前後のエコーの動画を示していただくことで分かりやすく理解できました。予後改善の治療が最も大事であり、心不全は増悪を繰り返すことで予後が悪化するため、服薬継続を行ってもらいたいとの話がありました。別の予後改善の治療として、ペースメーカー等をつかう非薬物治療を紹介していただきました。2021年の予後改善の心不全治療ガイドラインを示され、最近は降圧剤・利尿剤等を投薬することが標準的に決まっているため、薬の量が多く、高齢者では管理が難しい。在宅で残薬があった際は、主治医に相談するなど、互いに情報共有を図ってもらうことで処方の仕方や用法を検討できるのでお願いしたいとの話がありました。
③ 血液の流れから心不全の症状について、説明していただきました。血液を上手く送り出せずうっ血することで、肺での呼吸困難、足の浮腫や、腹部膨満感による食欲低下、尿量減少による体重増加等様々な症状が起こってくる。他にも、四肢への供給が不十分で起こる易疲労感や四肢冷感を挙げられました。うっ血が主病態でおこる肺水腫や体液貯留が約9割を占めているが、易疲労感や四肢冷感等の低灌流は重症な心不全であるため合わせてより注意してみてもらいたいとの話がありました。入院の1週間前までの症状出現のデーターを示されました。1週間前には、黄色アラートでの浮腫や息切れ、3日前には、赤アラートでの安静時や臥床時の息切れ症状が出現していることが多く、アラートに沿って早期に受診することで、重症化予防につなげることが大切であると話されました。実際の事例として90歳の方で、家族が「和歌山心不全手帳」を活用し、日常状態を記載していたため、黄色アラートでのむくみや体重増加、息切れの早期発見ができ重症化に至らず数日で退院され、筋力低下にも至らず現在も元気にご自宅で生活されているそうです。最近では、アラートに沿って受診される方も増えてきており、「和歌山心不全手帳」もかかりつけ医にも徐々に浸透し始めているそうです。和歌山市の消防隊にも、「赤アラート」で伝わるようになっているとのことで驚きました。
④ 「和歌山心不全手帳」の使い方について紹介がありました。手帳はモニタリング用で、心不全アラートへの理解、自己管理(体重・むくみ・息苦しさ)記載からの受診の目安に工夫して作成したとの説明がありました。患者様と一緒に手帳をみながら、心不全の治療経過について触れ、再入院、増悪を予防することの意味をしっかり伝えるようにしているとの話がありました。その他では、日常生活(塩分・喫煙等)管理のコツでのQ&A集、緊急連絡先や急性期病院などの記載欄、ACP(人生会議)についても触れられているので、手帳を通して話しあう機会になってほしい。「和歌山心不全手帳」が幅広く普及し、受診基準が広がるきっかけつくりになってもらいたいとのことでした。
最後に、心不全患者への療養支援は、入院時の療養支援だけで心不全増悪を防ぐには限界がある。医療と介護の切れ目のない継続的な支援により、地域における生活者の観点で、どのような希望や思いがあるのか、本人の病みの軌跡も意識して支援していくことが必要であるとの話がありました。
和田先生、貴重なご講義ありがとうございました。
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