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お知らせ

「リハビリテーション科医って?」~当院の取り組みも含めて~

 4月の「医療と介護の未来塾」も、なるコミにおいて感染対策には十分注意しながら、ハイブリッド方式で開催いたしました。今月のテーマは、「リハビリテーション科医って?」~当院の取り組みも含めて~でした。講師は、向井 裕貴先生(藤民病院副院長)(以下、先生)からご講義いただきました。今月の参加者は、Zoom参加者:5名(最大)・なるコミ聴講:22名:合計27名でした。ご参加いただきました皆さま、有難うございました。

 今月も、イラストや様々な動画を用いながら、わかりやすくご講義いただきました。
 まずは先生より、リハビリテーション科医になられた経緯についてご紹介していただきました。研修医時代にリハビリテーション科医にまわり、田島教授より「病気を診ずして病人を診よ」という病気だけを治すのではなくその人自身を良くしようというwhole body(全身)として診る考え方を教わったそうです。その後、他の科をまわり様々な患者の治療を行う中で、薬、点滴だけが治療ではなくリハビリも治療の一つであることを改めて学ぶ上で、自分はスペシャリストの専門医より幅広く診られるジェネラリストの医師が向いているのではと考えるようになったそうです。その後、10年間田島教授のもとで学び、2023年より藤民病院副院長として勤務されているとのことでした。
 次にリハビリテーションについてご説明していただきました。医療の本質は「救命」であることは間違いないが、その上で、活動を改善すること:「元気にする」事が重要である。
癌診療でさえも、5年生存率至上主義からの脱却や社会復帰に向け手術適応になるようにPerformance Status(全身状態の指標)を上げるなどして「活動性」に基づいた治療が行われている。また田島教授の「安静は麻薬」「運動は万能薬」の言葉と「Bed rest」の動画を用いて安静がいかに心身機能に悪影響を及ぼすかを示していただきました。さらにオムツもつけることが難しいほど拘縮された患者の写真も示され、発症早期から負荷をかけていたら防げたかもしれない。こんな人を作りたくないとの熱い思いも語られました。様々な心身機能の低下は運動と起立で防ぐことができ、生命の本質は食べて動くこと、食べて細胞をリニューアルすることが重要である。また、刺激と運動が細胞リニューアルを引き起こすとして、様々な実験結果や文献等もご紹介していただけました。例として、「運動の意義と重要性」の文献では運動強度を1METs増加させることで,生存率が12%改善、また癌細胞の肺転移も運動群のほうが転移も少ないことのデーターを示され運動の重要性が理解できました。先生より、リハビリは質も大事であるが、量のほうがもっと大事である。藤民病院では、国家資格を持った療法士とともに「リハビリ治療」をしており、患者様の「活動性」を良くする攻めのリハビリに取り組んでいる。実際、「新患検討会」としてリハビリを処方するときは、状況や注意点、目標を皆で共有し、目の前の人を良くするために全力を尽くしている。また月に1度症例検討会を行い、患者様の状態や目標・リハビリテーション内容について医師・療法士で相談し合うようにしている。決して、リハビリは廃用予防ではなく、患者さんを劇的によくする方法として認識し、どの療法士も熱く取り組んでいますと説明していただきました。
 さらに、リハビリテーション科医として、病院で関わっている事例をご紹介していただきました。
 ①意思疎通は正常、人工呼吸器をされている脊髄損傷の方。先日、約2年ぶりに車いすで奥様と一緒に病院敷地内を散歩された。入浴も週2回行っている。
 ②超高齢の頚髄損傷の方。強いしびれ痛みで食事摂取不良やうつ症状を発症されたが、日々のリハビリにより、自助具で食事摂取でき、先日家族の元に退院された
 ③摂食嚥下機能評価として、神経難病の進行、covid後、誤嚥性肺炎後などで食事摂取困難な方に対し、嚥下造影検査を施行し、食事形態の検討や訓練指導を行っている。
 ④義肢・装具療法として、脳血管障害による片麻痺の方に対し、装具療法を施行した。
 ⑤高次脳機能評価として、失語症の方に対し、標準失語症検査(SLTA)を行うことで、聞く・話す・読む・書くの得意不得意を分かりやすく家族に具体的な道筋を示すことで、日常会話が増えるようになった。
 ⑥脳梗塞、脳出血などの後遺症の一つである痙縮の治療として、ポツリヌス療法を施行。施注後リハビリや適切な装具を使用することで、杖歩行も安定傾向になった。先日、先生が家族で和歌山城のお花見をされていた際に、お会いしたとのこと。。
 最後に先生より、目の前の人を良くするための手段方法がたくさんある。病気を診て治療することも大変重要であるが、急性期や生活期に限らず、例えば転倒による骨折であれば骨折だけを治療するのではなく、リハビリ科医として食思不振や自律神経障害など包括的に診てリハビリにつなげADL・QOLの向上を図っていきたいと考えていますと話されました。
向井先生、遅くまで貴重なご講義大変ありがとうございました。
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